
潰瘍性大腸炎・クローン病
潰瘍性大腸炎・クローン病
**炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)**とは、腸に慢性的な炎症が繰り返し起こる病気の総称です。
大きく分けると「原因が特定できる腸炎」と「原因が不明な腸炎」に分けられます。例えば、感染性腸炎や薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸結核などは原因を取り除けば改善するため「特異性炎症性腸疾患」と呼ばれます。
一方で、原因が明確ではなく、長期にわたり腸の炎症が続く病気を「非特異性炎症性腸疾患」と呼び、その代表が**潰瘍性大腸炎(Ulcerative Colitis:UC)とクローン病(Crohn’s Disease:CD)**です。
これらは自己免疫の異常が深く関わっており、本来は体を守るはずの免疫が、自分自身の腸を誤って攻撃してしまうことが原因とされています。結果として腸に慢性的な炎症が起こり、症状が長引いたり、再燃と寛解を繰り返す経過をたどります。
IBDは10〜40代の若年者に多く、発症後は一生にわたり病気と付き合っていく必要があります。しかし、近年は治療薬の進歩により、症状をコントロールしながら生活の質を維持できるようになっています。
潰瘍性大腸炎とクローン病はいずれも厚生労働省の指定難病に認定されており、医療費助成制度を利用することができます。
炎症性腸疾患では、以下のような症状がよく見られます。
「単なる胃腸炎だろう」と思って放置してしまう方もいますが、数週間以上症状が続いたり、繰り返す場合はIBDを疑う必要があります。
炎症の起こる部位や広がり方、合併症などが異なります。
項目 | 潰瘍性大腸炎(UC) | クローン病(CD) |
---|---|---|
炎症部位 | 大腸のみ(直腸から連続的に広がる) | 口から肛門まで全消化管。特に小腸末端・大腸 |
炎症範囲 | 粘膜・粘膜下層に限局 | 腸壁全層に及ぶ深い炎症 |
広がり方 | 直腸から連続的 | 非連続的(スキップ病変) |
病型 | 直腸炎型、左側大腸炎型、全大腸炎型 | 小腸型、小腸・大腸型、大腸型 |
好発年齢 | 男性20〜24歳、女性25〜29歳 | 男性20〜24歳、女性15〜19歳 |
主症状 | 血便、下痢、しぶり腹、腹痛、貧血 | 慢性下痢、持続腹痛、体重減少、肛門病変 |
合併症 | 中毒性巨大結腸症、穿孔 | 狭窄、瘻孔、膿瘍、肛門周囲膿瘍 |
主な治療 | 5-ASA、ステロイド、免疫調整薬、生物学的製剤、外科手術 | 栄養療法、5-ASA、ステロイド、生物学的製剤、外科手術 |
潰瘍性大腸炎は、大腸の粘膜に炎症や潰瘍が起こる病気です。炎症は直腸から始まり、連続的に大腸全体へと広がります。
クローン病は消化管のどこにでも炎症が起こり得ますが、特に小腸末端(回盲部)や大腸に多く見られます。炎症は「スキップ病変」と呼ばれる飛び飛びの分布で現れ、腸壁全層が侵されます。
IBDは腸だけでなく全身に影響します。
腸管合併症
狭窄、中毒性巨大結腸症、穿孔、瘻孔
腸管外合併症
関節炎、強直性脊椎炎、結節性紅斑、ぶどう膜炎、PSC(原発性硬化性胆管炎)
合併症の有無によって治療方針が変わるため、定期的な検査と早期対応が欠かせません。
IBDの診断には複数の検査を組み合わせます。
内視鏡検査(大腸カメラ)
炎症範囲を直接観察し、生検で確定診断
CT・MRI腸管造影
腸の状態や合併症の有無を確認
血液検査
炎症マーカー(CRP)、貧血の有無
便中カルプロテクチン
腸の炎症を鋭敏に反映するマーカー
厚生労働省「難病情報センター」によると、2023年時点の推計患者数は以下の通りです。
患者数は年々増加しており、特に若年層での発症が目立ちます。いずれも指定難病であるため、医療費助成制度が適用され、長期的な治療を経済的に支える仕組みがあります。
当院(東松原駅前いけざき内科内視鏡クリニック)では、潰瘍性大腸炎・クローン病を含む炎症性腸疾患に対して、診断から治療、合併症管理まで一貫して対応しています。
IBDは長期にわたる病気ですが、適切な診断と治療により生活の質を大きく改善することができます。
「血便が続く」「下痢が止まらない」「お腹の調子がずっと悪い」──そんなときは自己判断せず、どうぞお気軽に当院にご相談ください
TOP